ケアマネの給料が介護職員よりも安い理由

介護業界

少し前に介護ニュースを読んでいるとこんなニュースを見かけました。

厚労省が昨年10月に公表した調査結果によると、「特定処遇改善加算」を取っている事業所の介護職員の平均給与は32万5550円。勤続10年以上の介護福祉士に限ると36万6900円で、主任ケアマネよりも高くなっている。
ケアマネの平均月給、約33万円 勤続10年以上の介護福祉士を下回る

介護業界全体の給料は他の業界と比較して安いわけですけれど、それはケアマネになっても同じようです。

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取得が大変なケアマネージャー(介護支援専門員)の資格

試験
ケアマネの資格って取得することが割と難しくて、まず受験するためには介護福祉士を取得するか相談業務を5年以上しないといけません。
その上で合格率が10%〜20%の試験に合格しなければいけません。
介護現場に未資格で入った場合には介護福祉士を取得するためには3年かかるために約10年コースです。
さらに、合格した後も大変で更新制になっており、5年間の間に研修を約100時間(業務未経験の場合には約50時間)
これだけのハードルをクリアしても介護職員よりも給料が安いというのはひどすぎないかと思います。
ただ、現実的には様々な原因が重なりあまりケアマネの給料を上げることができないという運営上の理由があるようです。

ケアマネの給料が上がらない理由

pc前で悩む
ではなぜケアマネの給料が上がらないのかということに関して僕なりの考察をまとめてみました。
運営上と制度上の観点からして、様々な問題があり給料を上げたくても上げることができません。

ケアマネ資格の保有者が多すぎる

多い本に潰される
まず、一つ目の給料があがらない理由としてケアマネの資格を保有している人が多いというのが理由です。
これはビジネスの基本なのですが、市場に数が少ないものは価値が上がり、市場に数が多いものは価値が下がります。
コロナ禍でマスクが品薄になり値段が高騰していましたが、お店に出回るようになると1箱1000円程度で買えるようになったのは記憶に新しいと思います。
これと同じで現在、ケアマネは事業所の数に対して余っている状態なのです。
【厚生労働省】令和元年介護サービス施設・事業所調査の概況
厚生労働省が調査をしたデータを見ると、居宅介護支援事業所の数は、令和元年の調査では約40000件です。
第22回介護支援専門員実務研修受講試験の実施状況について
それに対してケアマネの合格者数は毎年5000〜10000人程度。
受験資格が厳しくなる前は20000人以上合格者がいました。
ケアマネの合格者数の累計は70万人以上もいます。

単純計算だと、事業所数に対して10倍以上の数のケアマネがいることになります。
もちろん、ケアマネの仕事を指定ない人もいると思いますのでもう少しケアマネの人数は少ないと思います。

介護職員の給料は人材不足で上がっている

給料をもらった男性
では逆に介護職員の数はどうなっているのかと言うと、介護業界は慢性的な人材不足に陥っています。
2040年問題というものがあるように、急速な高齢化社会に対して介護現場が対応できていないという状況ですし、今後もその傾向は変わらないでしょう。
この状況では政府としても人材不足はなんとしなければ行けないと考えるのも当然ですので、結果的に「処遇改善」という形で現場の職員の手当を増やして待遇をよくしようという動きにつながっています。
人材が余っているケアマネの給料が下がり、人材不足の介護職員の給料が上がるのは当然の流れだと思います。

得られる介護報酬が安い

データで悩む人
また、ケアマネという仕事は利用者のケアプランを作成することで報酬を得ているのですが、このケアプランの介護報酬がかなり安いです。
ケアマネの事業所がほとんど赤字であるという東洋経済の記事からの引用です。

開設から5カ月で「店じまい」とは驚くが、居宅介護支援事業所が大幅な赤字を続けていることは、厚生労働省の調査(下グラフ)からも一目瞭然だ。その原因はケアマネジメントに対する介護報酬が著しく低額に設定されていることにある。
《介護・医療危機》ケアマネの自立認めぬ厚労省、”安すぎる報酬”の狙い

この記事にもあるように居宅介護支援事業所の多くは赤字であり、儲かりません。
経営者側としても売上の上がらない事業所の給料は減らすというのは合理的な行動なので仕方あります。

ケアマネ資格は強いが、評価につながりにくい

サッカーをする女性
では経営上ケアマネの事業所なんて不要なのではないかと言うとそう言うことではありません。
ケアマネはサッカーで言うところの司令塔の役割です。
ケアマネは自分の采配でケアプランを作成することができるため、利用者にどの事業所を利用してもらうかということを選ぶことができるんですね。
同じ会社の居宅介護支援事業所のケアマネが太いパイプを持っていて、同グループの訪問介護やデイサービスを利用するケアプラン組むことができれば、会社全体の売上は跳ね上がります。
なので、ケアマネがどれだけ自分の会社に貢献しているかで会社全体の売上が変わってくると言っても過言ではありません。
ケアマネの重要性を理解している会社はケアマネの待遇は良くしていると思います。
優秀なケアマネほど会社全体の売上に貢献してくれるわけですからね。
しかし、介護業界には介護報酬のことをあまり理解していない経営者がいて、居宅介護支援事業所の売上が赤字で理由を把握していないこともあるんですよね。
実は僕がいた訪問介護事業所もそんな感じで、不動産出身の経営者がケアマネの売上が赤字続きなことに対していつも不満をもらしていました。
ケアマネは1人の利用者を増やして売上が1万円強上がる仕事なので、営業を頑張っても思った以上に給料が上がらないんですよね。

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介護保険の制度が厳しくなっている

圧迫面接
また、同じ会社のベテランケアマネさんが「介護報酬の改定の度にケアマネの待遇が悪くなってる」と怒っていたこともあります。
聞いた話によると昔は訪問介護で6時間ぐらいサービスに入ったり、自分が所属しているグループの事業所だけを利用してもらうことができていたようですが、年々厳しくなってお介護保険を利用する条件が厳しくなっているみたいですね。

これに関しては、介護保険を悪用して家事代行サービスとして利用する家族がいるとか、自分のグループ企業の事業所だけを使うのは利益誘導になるとか色々と問題はあるので一概に悪いとは言えないようです。

ただ、ケアマネの権限が減らされているという点でケアマネの給料の減少につながっていると思います。

ケアマネが給料を上げるためのポイント

癒着
ここまで、ケアマネの給料がなぜ低いのかということに対しての考察を行なってきましたが、ここからはケアマネが給料を上げるためのポイントについて話をしていきたいと思います。
現状ケアマネは供給過多の状態なので、不利な状況には代わりがありませんがそれでもケアマネという資格は介護事業所においてできることが多いので何をすれば給料が上がるのかという点について書いていきたいと思います。

主任ケアマネを取得する

作家
まず1つ目は主任ケアマネを取得することです。
主任ケアマネがケアマネの上位資格で5年以上経験が必要になります。
2021年春からは居宅介護支援事業所では責任者が主任ケアマネを取得していることが原則化されました。
しかし、現在では10%もの事業所の責任者が主任ケアマネを取得できていません。
そのため、猶予規定が6年も延長されました。
ケアマネ事業所管理者の主任ケアマネ要件、猶予規定を2027年まで延長し、山間部等での例外措置も創設―厚労省
先程、ケアマネの人数は余っているから給料は安いと説明しましたが、人材が不足している主任ケアマネの資格は価値が高くなります。
最悪の場合、主任ケアマネがいない事業所は閉鎖しなければ行けないため、かなり重要であることがわかります。
また、主任ケアマネになれる要件はケアマネの実務経験が5年という高いハードルがあるため、介護資格の中では今後も価値が下がりにくい資格でしょう。

会社を設立する

ワンマン経営者
ケアマネの資格が持っていれば、会社全体に利益をもたらすことができます。
ということは自分自身が会社を経営してしまえば、ケアマネでケアプランを作成することで、自分の会社に売上を増やすように誘導することができます。
会社で社員としてのケアマネは司令塔ですが、自分が事業所をたちあげることで監督になることができるわけですね。
自分の努力がそのまま会社の利益につながるわけなので、やりがいも生まれます。

介護職員に戻る

介護職員
身も蓋もない話ですが、いっそ介護職員に戻ってしまうというのも給料を上げる方法です。
先程説明しましたが、人数が余っているケアマネと人数が足りていない介護職員では介護職員の方が給料が上がる見込みがあります。
無理にケアマネの仕事にこだわらずに夜勤をしたほうが給料が上がることも考えられるため、主任ケアマネを目指す予定がなければ介護職員に戻るのも選択肢の一つだということは知っておいた方がいいでしょう。

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まとめ

今回はケアマネの給料に関するお話をしました。
僕がいた訪問介護事業所は小さくてPCに強いのも僕だけだったので、PCのデータを作成するために売上などを見ることが多かったのでとても良い勉強になりました。
ただ、ケアマネは数字上では会社の売上に貢献しづらく、赤字になりやすいです。
その状況を理解している会社であればケアマネの待遇も良いとは思いますが、 そうでない場合にはとにかく安くケアマネに働いてもらいたいと考える事業所もあるかもしれません。
現状、資格を持っている人の多いケアマネは今後も厳しい状況は続くかもしれませんが、介護報酬で会社の売上が決まってしまう以上は、介護報酬が今後改善されることを待つしか無いかもしれません。

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